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兎  (岬 多可子) [うさぎ・兎・ウサギ]


  兎             
                   岬 多可子


夜の飼育小屋で

たくさんの兎がしずかに混じり合っている

声というものがないので

区限ということがない



小麦粉のドウとドウを捏ねてひとつにする

そんなふうな混じり方



そして また

そこからひきちぎられたように

濡れたにぎりこぶしが

夏の赤い穴の中にころがっている



粉のような虫が

小屋の錆びた鍵穴から 大量に湧き出て

どこかへと長い長い列を作る



にじみでていく夜というものが

兎というものの全体なので

生死を数えることはできない


  ”””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””

これは岬多可子詩集『静かに、毀れている庭』のなかの作品。ひさしぶりに兎の詩を引用
できて嬉しい。この詩からは「生命」とか,「類」というもののもつ不条理な重さ,哀しさを感じる。
3連の(夏の赤い穴)とはなんなのか、(ひきちぎられたようにころがっている…濡れたにぎりこぶし)
とはなんなのか。生き続けていく生命の奥底にひそむ不気味な営為やエロスを感じる。詩で
なければ表現できないある感覚だと思う。とくに最後の連が印象的だ。
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耳のなかの兎 [うさぎ・兎・ウサギ]

明けましておめでとうございます。
今年は卯年、一年休んでいた「二兎」もそろそろ追いかけようかと思っています。


         耳のなかの兎                                          
                               水野るり子

   月夜に耳をかたむけていると

   兎が二匹やってきた

   (おや アリスはゆうべも月を修繕してないな

   (もう満月なのに

   (波長がずれている

   (メロンの10%ほどの音色で

   (カモメたちの高さで

   (空気の粒子が荒れている

   (ゆれるベッドの上で

   (子どもたちが夢の投網をたぐっている

   (あれは幼い蛾の一種かな

   (でも今夜は藻がふえすぎていて

   (大気のなかいっぱいに からまって

   (投網もほつれかけている

   (すきまから魚たちが ほら

   (サヨリもイカも 星みたいになって

   (だんだん空の中途へ消えていくね

   黄ばんだ羊皮紙をめくるように

   兎たちの会話はとぎれ

   一匹が

   ポケットから取り出した時計を

    ―それは少女の頃の私のものだ―

   ためつすがめつ眺めている

   (ああ 今は何時かな 小さな雲がかかって見えない

   (また遅刻だね

   二匹の兎はそういいながら

   私の耳のなかへと

   月あかりの道を降りていった




 ””””””””””””””””””””””””””””””””
  これは詩集『ラプンツェルの馬』に載せたものです。
  月明かりの道へ追いかけていくものは、この世界から迷子になるかもしれません。     
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うさぎ [うさぎ・兎・ウサギ]

       うさぎ             
                        絹川早苗

   

    うさぎが 長い耳をたれて

    夕焼けを聴いています

    耳のおくの もみじばやしが

    赤や 黄や あめ色に染まりはじめ

    いちまい にまいと 葉を落としていきます



    ひとり住まいの 銀髪の女のひとが

    おんがくを聴きながら

    アルバムをひらいています

    古い写真は すでに色あせ

    うす茶色の蛾となって 飛びたっていきます

    

    やがて

    ひざの上に さらさら 粉雪がふりしきり

    こんもり 温かく つもっていきます

    うさぎは もう

    ねむってしまったでしょうか 


””””””””””””””””””””””””””””””””””

絹川早苗さんのちょっと異色の詩です。「うさぎ」と、「銀髪の女の人」のイメージが
二重に重なって、おもしろい効果が出ています。うさぎの耳の奥では夕焼けの中にうつくしい紅葉がはじまり、女の人の耳の奥にはなつかしいが、色あせたアルバムがひらかれていて、しかも写真は一枚ずつ「蛾」となって時の中へ飛びたっていく…。

でも粉雪はあたたかく膝につもりはじめ、うさぎは季節に身をゆだねて、安らかに夢のなかへ入っていく…。どこか、許されて、人生と折り合いをつけた安らぎの境地が見え隠れして、詩人のいまの心情が想われました。    

      

 
    
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初雪の日に [うさぎ・兎・ウサギ]

     初雪の日に
                     佐藤真理子



         北緯42度の

         空は

         冬に始まり

         冬に終わる



         めぐる四季の

         輪の結び目に

         いま

         新しい

         雪が降る



         枯れた野原に

         裸の樹々の枝先に
  
         頬に

         手のひらに
         
         待ちわびていた

         雪が降る



         染まった色を脱ぎ

         白うさぎになって

         雪の野原を

         飛びまわるわたしが

         残す足跡さえも

         すぐに消し去る

         雪に包まれて



         空の遠くから

         呼んでいる

         かすかな声に

         長い耳を澄ます        


 ””””””””””””””””””””””””””””””

 青森にすむ佐藤真理子さんの「初雪の日に」は季節の自然の匂いが満ちている。
2連目の”めぐる四季の/輪の結び目に/いま/新しい/雪が降る”や、最後の連の”空の遠くから/呼んでいる/かすかな声に/長い耳を澄ます”という表現に独自の魅力を感じてしまう。風土のもたらす独自な感性や想像力があるとすれば詩人の表現がそのなかでどのように影響を受け、育っていくのか…と思う。
 以前、三月か四月頃にジャワを訪れて、熱帯の花々に囲まれた日々を送った後、日本の我が家にもどってきて、まだ肌寒い庭で、やっと芽吹き始めた新緑に触れたときの胸のときめきが忘れられない。四季があるということへの感動。それは表現しがたい新鮮なものだった。いまは都会に住んで、自然に鈍感になって行く一方の自分がいる。        
                
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うさぎ [うさぎ・兎・ウサギ]

    うさぎ                       
                         高橋紀子 

  遠い昔に うさぎは逃げた

  月は

  虚空に登りつめて

  野を走り抜けるものを

  もしや と照らしつづける


    我を忘れ

    野を駆けつづける


    地を蹴って

    出来るだけ遠くへと


    走っても

    走っても


    追いすがる

    月の光に射抜かれて


    うさぎの目は

    赤く潤む


”””””””””””””””””””””””””””””””””””””

高橋紀子さんの詩集『埋火』から転載させていただいた。
月の野原を一心に駆けていく一匹のうさぎ。うさぎはどんな罪を負っているのか。
月の光にさえ追われるものの足音…その足音が聞き取れる耳をもっているだろうか?
わたしは…。   

                          
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 [うさぎ・兎・ウサギ]

            
           
         水野るり子


    野のうさぎ
 
    どこへいく

    星夜の

    火のうさぎ

    ねむれない夜の
 
    隕石のうさぎ

   

    ひとりずつ耳を立てて

    跳べ 跳べ

    燃える空へ

    帰れ
  

””””””””””””””””””

ヒポカンパス4号の「日々のコップ」に入れた作です。
夢の中でだったか、熱い隕石の兎に触れた記憶が…。
火傷って治らないものかも。
  
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病気 [うさぎ・兎・ウサギ]


   病気          水野るり子
 

子どもの頃病気はいつでも目や耳たぶの一部から始まった それ

は水がタオルにしみこむようにじわじわと全身にひろがってくる

ぼくは身をよじってからだのそこらじゅうから病気をしぼり出す

(長い夜だった)朝ごとにぼくはしぼりつくされた一枚のタオル

になって乾き切り つっぱったまま床によこたわっていた



女の子がやってきたのはそのときだった ぼくをそっと抱きかかえ

{あ、ウサギ!} そういってぼくを野原へ連れていった 野原は

空に近かった 花がリンリン鳴っていた ぼくのからだはほどかれ

て灰色の兎になった ぼくらはいっしょにかくれんぼした 花をむ

しった 蛇ごっこした もぐらを空へ投げ上げた 虫たちの翅を一

枚ずつならべていった それから向かい合って頭からおたがいを

食べっこした しっぽの先まで残さなかった



野原の真昼は永かった ジャンケンをすると角が生えた ふたりは

角のある兎だった ぼくらの足はぐんぐんのびて 野原はぐんぐん

せまくなった とんだりはねたりするたびに地平線をとびこえて向

こうがわへころげおちた ぼくらはかわるがわる消えっこした 消

えながら見あげると野原は夕陽で真っ赤に見えた それはかげって

おしまいに黒い空のなかへ吸い込まれていった もう野原へ帰る路

はなかった ひとりで泣きながらうずくまっていると ぼくのから

だはまたひからびてタオルのようにこわばっていった



あの日兎を置きざりにしてぼくは癒って大人になった だが今も病

気の前には野原の影がひろがってくる 兎があの場所でぼくを呼ぶ

のだ


    ””””””””””””””””””””””””””””””””

 はるか以前、女性詩人アンソロジーに寄稿したものです。野原がだんだんなくなって
 いくと、ウサギの呼び声もそれとともに消えていくのかも。
 
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井戸 [うさぎ・兎・ウサギ]

         
うさぎの詩のコレクションをしてみます。
今回の詩は、詩集『クジラの耳かき』、CD詩集「うさぎじるしの夜」に入れたものです。これは木村淳子さんの英訳により「POETRY NIPPONN 2010」に載ったものです。


          井戸          水野るり子


       おばあさんの
       
       耳の底には

       深い井戸があって

       ひとの寝しずまるころ

       ひそかに水を汲む音がします



        
         (あ 今夜も

         うさぎがやってきて

         ピンクのふくらはぎを

         洗っている…)


       
       ぬれた花びらのような

       うさぎの足跡は

       おばあさんの夢のそとにまで

       はるばると続いていて

       そこは…明るい月夜です



  
       

         The Well    Trans. by Junko KImura

 
A deep well is

at the bottom of

the old woman's ear,

she hears someone drawing water

when people are drifting off to sleep.


  (Oh, tonight again

  the rabbit is here

  and washing

  its pink calves…)


      
      Its footprints
 
      like wet flower petals
      
       lead afar off to…

      beyond the realm of the old woman's dream…

      There…it's a bright moonlit night.           
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