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ことば が 佐伯多美子 [詩作品]

詩誌「すぴんくす」から佐伯多美子さんの詩を一篇載せます。

            ことば が


ことばが ずれる

すこしずつ ずれていくと



ことば が



裏返ったり

宙づりに なる



おもいとは

別れて 暴走していく



暴走していく ことばを

ただ 傍観している



むかし

いいわけに いいわけに いいわけを

して

なお 混乱して



いま は

天井から宙吊りになっている ことばを



部屋のまんなかで

へたり

座りこんで 見上げている


”””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””

わたしにとって3.11以後の言葉との関係をこんなふうに言ってくれたんだ
と最初に読んだときに思ってしまった。くっきりと筆太に。
もう一篇。これも佐伯さんが書いた作品と思うと、うれしい。もちろん誰が書いても
うん、うんと思うけれど。


          あのね


あのね

きょう ひとつ いいことあった



きもち やわらかかったし

あたま パンクしなかったし



ねこが フードいっぱい食べたし

目が ふっと通じあえたし



あじさいの大きな花が涼しげにゆれていたし

テレビドラマ見ていて ぽろっとなみだこぼれたし



ゴミ出しもできたし

ねこと「り」の字になってひるねもしたし



玉子なしのチャーハンもおいしかったし

きな粉ミルクも



こころの中だけど「ごめんね」っていえたし



ひとつ

なのに よくばりだね

””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””

こんな一日があるといいな、と思いました。私のなかに、ないがしろにされた、
たくさんの”いちにち”がこっそり膝を抱えているようで。
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雪物語 [詩作品]

田中郁子さんの新詩集『雪物語』を読む。田中郁子さんの詩を読むと、あらためて
人とその「場所」の出会いの運命的な意味を考える。人は場所に選ばれることで
自分の生を創造していく存在かもしれない。

とてもいい詩を読んでいるとき、私もきっと窓から星を撒く人を見ているのかも知れ
ない。


    孤島
                      田中郁子


人間が老いると 窓になってしまうということは まわ

りの人が気づかないだけで ほんとうはよくあることな

のだ わたしの場合 数日窓からあおいものを見ていた

時のこと 胡瓜の葉が 一面に地をおおい 蔓の先が巻

きつくものを求めて空をつかもうとしている畑を 見て

過ごすことに始まった

 ーあれはどんなにしても コリコリと歯ごたえのある

  実をつけるだろう 葉がくれに黄の花さえちらつか

  せているではないかー

そのうちに はげしく茂ってくる葉と蔓に かこまれ

て 自分がどこにいるのか わからなくなってくる



ある夜 星を撒く男を雲間に見る その男の手から た

くさんの星がばら撒かれるのを 瞬きもせず見たのだ

地上には落ちなかったが そのうつくしい輝きの下でカ

タバミが葉と葉を閉じて うっとり眠っているのを見て

から 誘われたのかふかい眠りに落ち そのままになっ

てしまう 二度と窓から入ることも出ることもなかっ

た 窓になってしまったのだ

遠い山里の古い家では 無数のわたしが無数の老婆とな

っていまでも窓に映っている 結局 わたしが窓から見

たものは 胡瓜の茂みとカタバミだったと思う その畑

の大きさが 孤島そのものだったと思う わたしはその

孤島を今でも全世界のように見つづけている
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