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廿楽順治詩集より [詩作品]

おもしろい詩を見つけました。
廿楽順治詩集『詩集人名』からの一篇を載せたいと思います。

              
             辰三(弟)    


そういえば辰三にはたしか弟がいた

蚊帳のなかで

あじの干物をつついているのをみた

うすい弟だから

みんなにはどうしても見えにくい

辰三のあとを

きいろい雨になって追いまわしていた

いつだったかおれも

遠足の帰りに降られたことがあるぜ

辰三が肺病でなくなったときだ

どこか南の方の外国へいっていたときいたが

いつ帰ってきたのか

弟は水の音になって酒屋の隅にいた

やっぱりまるまってあじの干物を食っていた

顔は暗くてみえない

辰三はいつも足のうすい弟をかばっていた

泣いて逃げて行くときの足音が

辰三そっくりであった

血はあらそえないな

あるとき

人を刺してあたりをどしゃ降りにした

それ以来

この町の夕日は

弟の足のようにうすくなってしまったのだ



      ”””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””

この詩集は全編いろんな人名のひとが出てきて、半ば妖怪的、どこか自然現象的でもあり、
あるいは超時間的存在ともいえ、それでも彼らは、どこにもいそうな俗っぽさが
身上の人物たちだと思えてくる。そういう彼らの百鬼夜行ぶりに親しみを感じる。
自然と物質と人間の姿が重なり合い、入れ替わり合い、新しいこの世の表情を示すのは、
巧みなこの表現技術に拠っている。
一作一作、おもしろがりながら(ユーモアのこわさ!)読んでいくうちに、人間も自然のもたらす
一種の気配なんだと気が付き、ちょっと肩の荷が下りる気持ちにもなる。傑作だと思う。
(各行の脚を揃えることが必要なのですが、もしずれてしまっていたら、すみません!)

  

             
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